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8 questions to mama! milk
...アルバム「Parade」と「Quietude」にまつわる8つの質問


近年、彼らのライヴの重要なレパートリーとして披露されていた未発表曲「Parade」と「an Ode」。終演後、曲名を訊ねられたことは何度もあった。スタジオ録音されていないこれらの曲を現在の彼らの代表曲として愛する人をぼくは何人か知っている。
今回、トウヤマタケオに編曲をゆだね、録音されたヴァージョンを聴いて驚く人は多いだろう。なぜならこの二曲にはいくつもの表情・ヴァリエーションがあり、耳に残っている記憶とは大きく異なるからだ。
気が利いたことをする役者が三人、ここにいる。
まったく!
一方でこの二作を未だライヴ盤を発表したことのない彼らのライヴに最も近い感触をもつ作品として聴く人も多いかもしれない。日頃あまり多くを語らない二人に語ってもらった。

昼であれば目の前に視界が広がる「Quietude」と
夜であれば夜空に広がる星空を仰ぎ見るような「Parade」が
春の訪れと共にリリースされる。

聞き手:富田和樹(windbell)


Q1: お二人がmama! milkを始めたとき、最初からコントラバス、アコーディオンの編成でと考えていましたか?また、結成当初思い描いていた、目指していた自分たちの音楽はどのようなものでしたか?

生駒祐子(以下I):楽器は、なんだって良かったように思います。毎日どこかで楽器を奏でることが楽しくて、2つの楽器で演奏するための曲を作っていました。
そんな編成のための曲は、なかなかありませんでしたから。

清水恒輔(以下S)):編成というよりは、アコーディオンを弾く祐子さんと、ベースを弾く僕がなにかをする、と言うので始めたように思います。自作、他作問わす、いろんな曲を演奏していましたが、当初、心掛けていたのは、人にけんかを売らない演奏でした。
それまでが、それまででしたので 笑



Q2: 現在の音楽の大半は電気がないと再現できないものです。一方、コントラバスとアコーディオンという編成は街頭でも蠟燭の光しかない室内でも演奏ができますが場所ごとに多様な響き/反響があります。そういったことに自覚的になっていったのはいつ頃からだと思いますか?
お二人が知っている、独特な響きがある各地の会場をいくつか挙げてみてください。


S: 始めた当初からそうだったのかもしれません。音響設備のないところでもライヴができる、というのでいろんな場所に伺いました。また、おもしろそうな空間での演奏を提案して下さる方も、徐々に増えていきました。ここで、聴いてみたい、というような感じですね。
いろいろ知っていくと、やはり耳は贅沢になってしまします。
すべてがゆっくりなのではっきりとはわかりませんが、とくに自覚的になっていったのは欧州によく行くようになってからでしょうか。決して恵まれた環境ばかりではないのですが、乾いた空気と、建物や素材で音がこうも違うのか、と驚いたものです。
会場:art complex1928(京都)、元立誠小学校 講堂(京都)、法然院(京都)、 フェスティバルで演奏した、石畳の広場(Venezia)、Bazouges-la-Perouseの古い劇場(France)、 cafe Detaj(大阪)、krank(福岡)、たこ蔵(高知)、lete(東京)、cello(那覇)、 Museo della Carta e della Filigrana di Fabriano(Italy), ジョアンのフラット(Lisboa)、La Serilla (Barcelona)、 旧JR大社駅(出雲)、原美術館”THE HALL(東京)"、とある海辺の廃墟(日本)、Blue Planet Sky(金沢)、茅野市民館(長野)

I: 2004〜5年頃のヨーロッパ・ツアーは、大きなきっかけになったと思います。石畳の広場や、劇場で自分たちの演奏が響きわたるのを聴いた時、あぁ、楽器というのは、こうやって、空気をふるわせるための装置なのね、建物や、街そのものも、楽器の一部なのね、と。
2006年、金沢の佐伯さんが企画してくださった「ORGEL」。ある独特な響きを持つ空間でのコンサートで、この会場での演奏のために作曲させていただいたことも、とても大きなきっかけとなりました。



Q3: mama! milkがこれまでに演奏した各地の会場を辿っていくと、必ずしもコンサートを開く会場ではない場が大半です。このような公演のあり方/活動形態になっていった、いくつかの要因にはどんなことがあったと思いますか?

I:「好きな場所」で、演奏させていただけた、ということだと思います。「好きな場所」は、素敵な建物だったり、長居したくなる場所だったり、緊張感のある空間だったり。
また、公演に関わるたくさんの方々や、恒輔さんの創意工夫があったからこそ、可能になったと思います。

S: とても自然ななりゆきだと思います。居心地のよい場所での演奏を続けているだけかもしれません。
ステージや音響システムがフォーマット化されているところに、無理やり音楽をはめ込むのではなく、コンサートを作っていく各会場の方々、オーガナイザーと相談しながら、お客さまのこと、迎える側のことなど思考錯誤していくのが好きなんですね。
いかに良い時間をつくるか。
あとは、無駄なものが無いので、なにがあっても納得できます。とはいえ、コンサートホールは大好きです。



Quietudeジャケ写400.jpg  Quietude_image.JPG

Q4:「quietude」というタイトルを知り、録音を聴いた時、 ぼくは「静かな練習曲」というような意味合いの造語をイメージしました。
この録音では録音された場に集う鳥たち、建物を形作っている様々なものが、ある朝やってきた二人の音楽家が出す一つ一つの音に反応していく様が収録されていて、人という聴衆はいないけれども、ライヴ盤のようなざわめきがあります。お二人の演奏も即興的というか、かなりフリーフォームです。場所に響いた自らの音に耳を澄まし、応えるかのような。
お二人が思う、音楽家にとって実のある「Lesson」をいくつか挙げてください。
もう一つ、音楽家にとって「聴くこと」がもたらしてくれるものとしてどんなことが挙げられるでしょう?


I: 聴くことは、なんだか、その音や空気の中に自分がとけていってしまうことのような感じがします。それは、自分自身もただの音になってしまうような、とても心地良いことです。
木々のざわめきや、汽船の気配、コンクリートのざらざらした音、そういうのを全部聴いて、そこに、少しずつ音を織り交ぜていくのは、とても楽しいことでした。
lessonがあるとしたら、心と体ですべてを感じることでしょうか。そして、自分の嗅覚を磨くこと。

S: "Quietude"は、”静けさ”という意味の名詞なのですが、これは、無音を意味するものではないと感じています。
正しいかはわかりませんが、静かな気持ちになる気配、ざわめき。
で、実のある「Lesson」について。
人と音をだしてみる、違った環境で音をだしてみる、他人の作った曲を弾いてみる、など、自分では予想できないことに遭遇することは、とても得るものが多いと思います。それと、やっぱり録音です。音楽に限らず、映画や本など、人が本気で作ったものに触れる事も大事だと思います。
聴く事は、まず始めにありきだと思っています。聴かないと弾けないですからね。
何人かで演奏する時は、全員の音が混じった状態を聴ける(イメージ出来る)ようになりたいです。



Q5:自作曲やスタンダードを時を経て、再演することはジャズやクラッシック、ロックのミュージシャンのキャリアによく見られます。
ミュージシャンにとってそういった作業がもたらしてくれるものはどんなことがあると思いますか?


S: その時に興味のある方向で編成、編曲、録音をできることで、新曲とおなじ、それ以上に新鮮な感覚を得る事が出来ることもあります。初録音で、いつまでもこれ以上無い状態というのも、ないですからね。機会があるなら、再度やってみたい曲はたくさんあります。

I: 演奏は生もので、その瞬間にだけ放つ香りがある、ということに敏感でいられると思います。

お二人が好きな再演を1曲あげてみてください

S: Pink Elephants On Parade/Sun Ra And His Arkestra

I: グレングールドのゴルトベルク変奏曲



Paradeジャケ写400.jpg  mama!milk_parade_1.jpg

Q6:「Parade」は近年稀に見る「引き」の録音です。大きな広がりを感じます。
ホールで録音された、残響音の深さや特性ももちろんありますが画として遠巻きに見ることで細部がより際立って見える感じとでもいいましょうか。前作「Fragrance of Notes」収録の楽曲もあらたな響きを獲得していて、書き下ろしの新曲かのように連なっています。
この作品でお二人が記録しておきたかったポイントをいくつか挙げてください。


S: まずは、表題曲の”Parade"と、”un Ode"をトウヤマさんのアレンジで収録してみたい、というので、このアルバム制作がスタートしました。楽器編成が決定してから、他の収録曲の選択、アレンジ、作曲を進めることになります。
2008年の”Quidetude"の録音、そして、前作「Fragrance of Notes」のリリース後に、コンサート用に編成した”Fragrance of Notes ensemble"での演奏、トウヤマタケオ楽団での活動、そしてここ数年お世話になっているエンジニアの林さん。その他、すべての活動をとおして、今のタイミングでしか出来ない事を記録したかったんです。引きの録音も、ホールの響きを活かし、Mixでどうにもならない演奏を求めた結果だと思うんです。
そういえば、「旅芸人の記録」と言うギリシャ映画がありますが、あの引きの長いワンカットは好きですね。

I: 「Parade」も前作同様、みんなで一緒に演奏、それをそのまま記録する、ということを大切にしています。人と呼吸をあわせながら一緒に演奏することは、とてもスリリングで魅惑的なことです。
一瞬の音を全身で聴き、呼応しながら次の瞬間へと進んでゆく、そういう会話と、会話を響かせているホールの音を、そのまま記録したいと思いました。それが林さんの「引き」の録音になったと思います。
それから、これまでに発表した曲の、演奏を重ねるごとの変化が楽しくて、再び収録しています。トウヤマさんとご一緒することで、mama!milkの楽曲がどんどん表情を変えていくことも、新鮮で素敵なことでした。
そう、この録音の数日間は、幻想的な霧につつまれたり、星の目映さに驚いたり、デザイナーの南さんが、アルバムのジャケット案の素敵な模型と多大なインスピレーションをくださったり、そんな中、演奏者一同、のびのびと真摯に楽しく演奏しましたから、その空気も記録されていれば、と思います。



Q7:清水さんはトウヤマタケオ楽団のメンバーでもあり、生駒さんはトウヤマさんの楽団に入りたいんです!と言っていたのを聞いたことがあります。トウヤマタケオさんとの共演は生駒さんのソロアルバム「esquisse」 発表後の公演などからより多くなっていった印象があります。
近年のトウヤマさんとの公演、録音で見えてきたこと、より加速したこととしてどんなことが挙げられますか?
トウヤマさんの魅力をここで告白してみてください!


I: トウヤマさんは作曲家としても、編曲家としても、また、ピアニストとしても、あまりにも表情豊かな、魅力的な方だと思います。偉大で少々頑固なセンセイのような、共犯者のような、とても繊細な少年のような。
随分前からトオヤマさんのほとんどの音楽を聴いていますが、いろいろご一緒できるようになり、ますます、音楽って素敵!と感じることが多くなりました。

S: トウヤマさんには、いろんな意味で助けてもらってますね 笑。数々の現場をご一緒してきたので、ここ数年で共通の言語が増えてきたように思います。
「敵をあざむくには、まず味方から」と、言ったかどうかは定かではありませんが、思いもよらぬ音がとんできます。で、POP。
楽団でもそうでしたが、今回”Parade"でアレンジも、最初にデモを頂いたときは、 「ほー。そうきますか〜。」でした 笑
トウヤマさんと音楽をしていると、「ほー。そうきますか〜。」の連続なのです。



Q8:この数年の活動の記憶のなかでこの二作を作るきっかけ/インスピレーションとなった事柄を 可能な限り多く、一人一人挙げてください。

S: ORGEL @ Blue Planet Sky 2006(金沢)、essquisse Quartet の全公演 2007、mama!milk " Fragrance of Notes " ensemble の全公演、録音、2008年のスペイン、ポルトガルツアー、2009年9月の山陰ツアー、トウヤマタケオ楽団の全公演、録音、林さんとの全録音作業、Philippe Decoufléの舞台鑑賞(solo, toriton.etc...)、サウダーヂ・エンターテイメントの森山さんの一言、krankという店の存在、れいこう堂、CCC kaleid scoop @ 茅野、cafe Detaj、夕暮薄明の演奏会@radicafe apartment(四日市)、THE GLOBE、お客さまからのリクエスト、ALEVARE repertoire 2 @水上野外音楽堂 2007 (東京)、cafe Ocha-Novaで朝にかかっていた、清水靖晃氏の「無伴奏チェロ組曲」、渡辺あや氏の脚本、日々の散歩。自転車。旅。

I: とにかくすべてのことが、この二作に結びつきましたけれど、その中でもまず第一のことは、前作「Fragrance of Notes」を録音し、作品として発表したり、いろんな会場での演奏の機会をいただいたこと。
それから、美しいもの、心動かされる光景にたくさん出会ったこと。
とびきり嬉しいことも、とびきりかなしいこともたくさんあったこと。
友人、知人のあらゆる作品、あらゆる活動から、たくさんの良い影響をもらっていること。
美味しいものや、きれいなお花や、嬉しいお手紙をいただいたこと。
亡くなった方や、生まれた方のいること。
好きな人のいること。
そして、なんと言っても、mama!milkは出会いにめぐまれていること。
今回ご一緒しましたaccoさん、薮本さん、神田さん、トウヤマさん、林さん、中田さん、映像の巽さん、contrail farmの川村さん、
そして、いつもご一緒している素敵な音楽家、素敵な友人、素敵な先達、素敵なお客さま。
みなさま万歳。
ありがとうございます。


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mama!milk at Guggenheim House 2010
photo : ISHIKAWA Natsuko






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